コンバージョンフローと潜伏期間を活用した具体的なPDCAサイクルの回し方

アドエビスをご利用いただく中で、「間接効果」や「コンバージョンフロー」といった詳細なアトリビューションデータを、どのように具体的なマーケティングの改善アクションに繋げるべきかお悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか?

アドエビスでは、媒体やチャネルをまたいだ分析が可能であることは分かっていても、そのデータを「どのように読み解き、どう意思決定に活かすか」が、活用上の大きな課題となりがちです。

この記事では、アドエビスの「コンバージョンフロー」や「間接効果」などの詳細な分析データを用いて、マーケティング施策の隠れた貢献度を評価し、次のアクションに繋げる具体的なPDCAの回し方をご紹介します。

1.分析の第一歩 ユーザーの検討期間を「潜伏期間」で把握する

詳細なアトリビューション分析を行う前に、まず実施すべき重要なステップは、潜伏期間を確認し、自社のユーザーがコンバージョンに至るまでのリードタイムを把握することです。

「平均潜伏期間」とは、コンバージョンしたユーザーが、最初に広告をクリック(または流入)してからコンバージョンに至るまでの時間の合計を初回接触数で割った値です。この指標を確認することで、広告が平均してどれくらいの時間でコンバージョンを生んでいるのかを分析することができます。

1-1.事例に見る潜伏期間の分析と活用

例えば、SaaSツールを扱うBtoB業界での事例では、潜伏期間の秒数ごとにグループ分けをしたグラフを用いて分析を実施しました。
※潜伏期間のグラフ作成方法はこちらをご覧ください。

データはダミーです

この分析では、以下のような具体的な洞察を得るためにデータを選別しました。

ノイズとなるコンバージョンを除外する

BtoBの場合、ユーザー(部下)が複数のツールの情報収集したうえで、検討に乗るものをいくつか上司に報告と共にURLを共有し、上司がお問い合わせのコンバージョンをするようなケースが考えられます。

このような即時性の高いコンバージョン(1日未満など)を一旦省き、検討期間が長い(1日以上など)ユーザーの行動を分析することで、施策が本来追うべきユーザーの検討期間を正確に把握できます。

データはダミーです

この潜伏期間の把握により、お客様の広告運用において、コンバージョンに至るまでにこれぐらい時間がかかるという前提を戦略の組み立てに組み込むことが可能になります。

2.コンバージョンフローで「誰の」役に立っているか深掘りする

潜伏期間を把握したら、次に「初回接触×直接効果のマトリクス」や詳細な接触履歴がわかるコンバージョンフロー画面を活用し、特定の施策がユーザーの購買行動のどの段階で貢献しているかを深く掘り下げます。

特に認知施策(例:SNS広告)を評価する際は、ラストクリック(直接効果)だけでなく、間接的な貢献度を測るこれらの指標が重要です。
※初回接触×直接効果のマトリクスの作成方法はこちらをご覧ください。

データはダミーです

2-1.具体的なデータの深堀方法

先のBtoBの事例では、特にMeta広告(Facebook/Instagram広告など)の貢献度を分析しました。Meta広告は成果が出るまでに比較的時間がかかる傾向があるため、長期的な視点での評価が欠かせません。

分析のステップとPDCAへの落とし込みは以下の通りです。

  1. 初回接触・直接効果のマトリクスで役割を把握する
    上のようなマトリクスレポートを作成し、Meta広告が初回接触(認知のきっかけ)になっているコンバージョンを特定し、その後、どの媒体やチャネルが直接効果(刈り取った施策)となっているかを確認します。

    この事例では、初回接触がMeta広告の後に、ダイレクト、外部リンク、Google Ads、自然検索といった経路を経由してコンバージョンしているユーザーが多く見られました。

    これは、ユーザーがMeta広告を見た後、「Metaだけでは情報不足だから色々見よう」という検索行動を喚起させていることを示唆しています。

  2. 間接効果データ(特に2〜10)で行動の「なぜ」を探る
    初回接触がMeta広告であるコンバージョンを対象に、コンバージョンフローを確認し、間接効果としてどのような接触が間に挟まっているかを詳細に調べます。

    たとえば、BtoBの事例ではMetaでコスト削減について訴求したクリエイティブに接触した後に自然検索に至っていることが分かりました。

    このフローを見ることで、ユーザーが自然検索や外部リンクに至る前に、Meta広告のどのクリエイティブに接触していたか、あるいはどのページまで遷移していたか、といった具体的なユーザー行動の背景を推測できます。
    この分析には、デバイスやブラウザをまたいだ計測漏れを防ぐクロスデバイス分析の活用が不可欠です。
    ※クロスデバイス分析についてはこちらをご覧ください。

  3. 改善アクション(PDCA)への具体的な連携
    コンバージョンフローと、広告登録時に設定した広告IDやクリエイティブの情報を突き合わせ、自然検索に至った理由についてチーム内で議論してみましょう。

    例えば、「このキャンペーンのクリエイティブに接触したユーザーは、その後、特に指名検索(社名検索など)に至りやすい」といった貢献度の高い要素を特定します。
    BtoBの事例では、「コスト削減に悩みを感じており、Meta広告のコスト訴求クリエイティブに接触してLPを見たことで、ツールを認知し、のちに自然検索に至ったのではないか?」という要素が特定できました。

    その結果、キャンペーン全体の中で貢献している要素をちゃんとピックアップし、なぜ貢献できているのかを明確にすることで、今後の広告戦略(例:クリエイティブの訴求内容の方向性、予算配分の方針)を考える上での参考とすることができます。
2.間接効果データ(特に2〜10)で行動の「なぜ」を探る
初回接触がMeta広告であるコンバージョンを対象に、コンバージョンフローを確認する方法
(フィルタ>媒体種別で選択する媒体は今回の場合Metaですが、見たい媒体に応じて変更してください。)

この種の詳細な分析は、日々の運用の調整に使うというよりも、次の認知施策を打つ際のカスタマージャーニーを考えることや、次の施策に活かすためのターゲット層の特徴を見に行くために使われることが一般的です。

3.分析を効率化するためのヒントとデータの活用

詳細な分析レポートは作成に工数がかかりがちですが、アドエビスで提供されるデータや機能を活用することで、効率的なPDCAサイクルを構築できます。

3-1.潜伏期間や接触回数の分布の活用

コンバージョンフロー画面などで、平均潜伏期間や平均接触回数を算出し、その分布を月ごとに比較することで、行動特性の変動を捉え、「なんでだろう」という改善のきっかけとなるデータを得られます。

この分布から、予算を増やすといった単純な判断ではなく、ターゲット層を変える、次の認知施策の設計を具体化するといったアクションに繋がります。

3-2.AIによる言語化の活用

初回接触/直接効果のマトリクス図などの分析結果を、AI(Geminiなど)の機能を使って分析させると、分析結果から言えることの叩き台を生成できます。

特に、複雑な分析結果をチーム内で共有したり、意思決定の判断材料として蓄積したりする際に、AIは言語化ツールとして非常に有用です。

4.事例に見るPDCAの回し方

BtoB業界を例に具体的なPDCAの回し方例をまとめました。ぜひこちらも参考にしてください。

PDCA実施項目具体的な内容と分析フロー
Plan
(計画)
リードタイムを考慮した戦略設計・戦略前提:BtoBは検討期間が数ヶ月に及ぶことが多いため、短期的なCPAだけでなく、長期的なLTVや商談化率を見据えたKPI期間を設定する。
・媒体選定:「認知(Meta広告など)」で課題に気づかせ、「刈り取り(リスティング、リターゲティング)」で資料請求やウェビナーへ誘導する設計を行う。
Do
(実行)
施策実行と計測環境の整備・ホワイトペーパー配布や共催ウェビナー等の施策を実施。
・クロスデバイス計測:通勤中のスマホ閲覧から、職場のPCでのフォーム入力までを繋げて計測できるように設定する。
・パラメータ管理:「どの訴求(コスト削減訴求 vs 売上アップ訴求)」が効いたか判別できるよう設定する。
Check
(評価)
記事のフローに基づく詳細分析【潜伏期間の確認】
・社内アクセスや競合調査などの「ノイズ(1日未満のCV)」を除外。
・リード獲得までのボリュームゾーン(例:30日〜60日)を把握し、MAツールでのナーチャリング期間の目安とする。
【初回接触で認知系広告が貢献したフローの確認】
・「初回接触×直接効果」のマトリクスを確認。
・「Meta広告などでサービスを知り、最終的に社名指名検索で資料請求した」勝ちパターンを特定する。
【詳細行動の確認(初回接触で認知系広告が貢献したフローの確認の深掘り)】
・コンバージョンフロー画面で、初回接触後のユーザー心理の変化を追う。
・「認知広告を見た後、一度『〇〇 比較』などで検索して比較検討記事を経由しているか?」など、検討プロセスの詳細を確認する。
Action
(改善)
ここから考えられる改善アクション【分析結果からの改善案】
・認知施策の改善:初回接触で貢献度が高かった「課題訴求(例:業務効率化)」を特定し、そのメッセージをLPのファーストビューやナーチャリングメールに転用する。
・SEO/リスティング広告の改善:認知後に検索されやすい「課題解決型キーワード」や「競合比較キーワード」でのSEO順位を上げ、比較検討段階の受け皿を強化する。

5.おわりに

このように間接効果やコンバージョンフローといった詳細なデータを見ることは、個々の広告の良し悪しに留まらず、ユーザーの行動特性を深く理解し、より戦略的なマーケティング判断を下すための確かな土台となります。まずは潜伏期間から、自社のデータの傾向を掴み、改善アクションに繋げていきましょう。

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