【アドエビスのうらが「わ」】ACM開発ヒストリー~第4話 託す覚悟~

弊社の新サービス「AD EBiS Campaign Manager」が、2025年5月に正式リリースとなりました。
構想から約3年、リリースに至るまでのストーリーを公開することでプロダクトへの愛を感じていただき、そして製品開発を行う皆様の参考になればと思い全15話をお届けします。

【第4話】 岩田 進(代表取締役 CEO)がお届けします
2023年初夏、私たち経営チームは合宿のため長野を訪れました。
こうした経営合宿は毎年場所を変えて開催しており、その年ごとの重要な意思決定の場となっています。オフィスを離れた場所で交わす会話は、ふだんとは違うリフレッシュされた頭で物事を考えるきっかけをくれます。
このときの合宿もまさに、そうした“いつもとは違う思考”が自然に引き出される時間でした。
今回のテーマの一つは、「次なる事業の柱をどう据えるか」。
私は『データドリブン・マーケティング』で示された思想──マーケティング・キャンペーン・マネジメントをプロセスとして構造化する考え方を提案し、それを新たなプロダクトの核にすべきだと訴えました。
この構想は、Slack上でも事前に共有・議論していたこともあり、合宿の場ではスムーズに合意が形成されました。経営陣の誰もが直感的に「これは必要だ」と感じてくれたのです。
一人では実現できない挑戦──託すという決断
「このままではダメだ」
そう思った私は、自ら前に出ることを決めました。
このプロジェクトを、社長である私自身が強いコミットメントを持って主導する。 それが、この場で下した最初の決断です。
通常であれば、誰かに責任を委ねるという選択肢もあったかもしれません。
しかしこの構想は、単なる新規事業ではなく、これからのイルグルムのあり方を変える挑戦です。思想をプロダクトへと昇華させるには、構想そのものに情熱と責任を持って取り組む必要がある──そう確信していました。
ただ、私一人でやりきれる話ではありません。構想を実装へと運ぶには、現場でPdMとしてプロジェクトを推進するリーダーの存在が不可欠です。
そこで、私はもう一つの決断を下しました。
「このプロジェクトの現場リーダーは、吉本に任せる」
なぜ、吉本だったのか
吉本は当社に新卒で入社し、最初はエンジニアとしてキャリアをスタートしました。
その後、営業職へ異動し、現場の最前線で顧客と向き合いながら経験を積み重ね、やがてマーケティング責任者を歴任。直近ではPdM担当執行役員として、既存サービスのPdMを担っていました。
どちらかというと控えめで、人の話をよく聴くタイプ。常に「どうすればチームが前に進むか」を考える姿勢が印象的で、役割が変わってもその本質は変わりませんでした。
彼は、器用なタイプではありませんが、チームからの信頼が厚く、難しい局面でも逃げずに立ち向かう人間です。
自然と人がついてくる、そういう“軸”を持っている。
やり抜くために本当に必要なのは、肩書きやスキルではなく、「構想を信じて、自分の言葉で伝えようとする意志」だと私は思っています。だからこそ、彼に託すことを決めました。
それでも辞退した吉本に、伝えたこと
この構想をその場で共有し、現場リーダーを任せたいと伝えたとき。
彼はこう答えました。
「自分は適任では無いと思います」
彼にとっては自然な反応だったと思います。これまでは既存サービスの改善に多く関わってきましたが、ゼロから新しいものを立ち上げるのは初めての経験。だからこそ、不安も大きかったはずです。
私は率直に伝えました。
「もちろん、私自身もこのプロジェクトには強くコミットする。
ただ、私の立場上、すべての時間を使うことはできないし、それではうまくいかない。思想をプロダクトに落とし込むには、現場で手足を動かしながら推進するPdMの存在が不可欠なんだ。一緒にやっていこう」
次回予告:「自分は適任では無いと思います」──託された側の葛藤
プロジェクトの構想は整った。リーダーも決めた。
けれど、現実はそんなに簡単には動き出しませんでした。
「自分には荷が重すぎるかもしれない」
任命された吉本は、そう率直に口にしました。
次回は、託された側──吉本の視点で描きます。
任命されたとき、彼は何を感じ、どんな思いで最初の一歩を踏み出したのか。
「任される」ということの意味を、あらためて問い直す回になります。
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