「新人Aのデジマ奮闘記」 第1話/はじめましてWebマーケティング。予算配分ってどう考えるの?
------この物語は、とあるサプリメント事業マーケティング部に配属された新入社員Aが
1人前のデジタルマーケターになるまでの努力と成長ストーリーです。
1. デジマの扉を開くとき
株式会社えびすたろう、春。
期待に胸を踊らせた新人Aはもともと興味があったサプリメント事業のEC事業部に見事配属。
希望していたWebマーケティングを担当できることになり、はりきっています。
はじめまして! 今日から配属になりました、Aです。 一日も早く戦力になれるように頑張ります! よろしくお願いします。
これからよろしくお願いします! 早速だが君には先輩Bと 一緒にWeb広告の運用と改善を行ってもらいますね。担当する商品売上目標は550万円。君は先輩と月間550万円の予算で1,500件注文CVを獲得できるように考えることが仕事です。具体的な仕事内容は先輩Bに教えてもらってください。
わかりました! (うう、早速目標が・・・! 大変そうだ・・・!)
2. 目標から逆算して、施策実施目的を考える
これから一緒にお仕事をすることになりました、メンターのBです。Aくん、よろしくね。早速だけど、さっきの部長の話の中でなにかわからない点があったみたいだね?
そ、そうなんです。たしかCV=成果なので、部長は「注文件数」の獲得を指示していたのかな、と思っているんですが…。 目標とする1,500件の注文獲得するように、どんな施策でいくら投下するといいのか、のイメージをつけたいんですがわからなくて…!
いいところに目をつけたね。初日だし部長はシンプルに注文件数だけ伝えてくれたけど、Aくんの言うように運用していくには、もう少し細かな目標数値が必要です。 この練習用データを渡すので、緑色のセルのコストを入れてみて、どう配分して運用すると1,500CV達成できそうか、自分で考えてみてね。明日MTGで答え合わせにしよう。
※練習用データはこちらからダウンロード。
3. 【クイズ】新人Aと目標達成のための予算配分を一緒に考えよう!
◆問題
この図はある月のレポートです。
このサイトは、何も施策をしなくても「毎月100万ユーザーが訪問」します。
このサイト上で550万円の広告予算を用いて、N月に1500件のCVを獲得できるよう 各施策に予算を配分してください。
◆前提条件
- 操作するのは緑色の「広告コスト」部分のみです。
Imps・Click・CVはこれまでの実績「CPC・CTR・CVR」によって算出するようになっています。 - リスティング(社名)とリマーケティングは、N月の見込み顧客・100万UUの30%が 上限impsとなり、超過している場合は☓imp上限突破というエラーが出ます。
- 予算がぴったり550万円でないときは予算が異なりますというエラーが出ます。
- サイトに訪問する100万ユーザーのうち、30%が見込みユーザーで、 当月2.8%の割合で自然検索経由でCVしてくれます。
帰宅後・・・
部署の人達はみんなは優しそうだったけど、 配属されて、いきなり宿題が難しいな~。
よいしょ、っと。 デジタルマーケターの卵のAくん、はじめまして。どうやらお悩みのようですね。
うわ!なんだ?(ちっさいおじさんが喋っている…!)
私は、エビスくん。悩めるデジタルマーケターの味方です。先輩からの宿題の調子はどうですか?
はじめまして。Aです。1,500CV以上になるには?はエクセルを色々触っているうちにできました。 でも、どうやったらできるか?は、よくわからなかったけど。
なるほど。その疑問はこの「パーチェスファネル」図を使って整理することが近道です。 4つの施策の目的に合わせて書き込んでみてください。
あ、ありがとう。(この図がどうつながるんだろう…ひとまず書いてみて、明日先輩に書いたものを見せてみよう…!)
エビスくんのすすめるシートで思考を整理する新人A。
部長から与えられた『注文件数:1,500件』というKPIを達成するための予算配分の仕方とは?
4. 先輩Bのよく分かる解説
先輩!おはようございます。問題解けましたよ! 今日のMTGで答え合わせお願いします。
おはよう~すごいね。MTGで見せてもらえるの、楽しみにしているよ。
答え合わせMTGにて
先輩見てください!早速ですが、達成できました。
素晴らしい!1,500件CV獲得、見事達成だね。 この結果にたどり着くまで、どんなことを考えたか教えてくれるかな?
ええっと…。正直に言うと「なんとなく」なんです。獲得することに夢中になってしまって。数値を入れてみて『COST合計が550万円になるようにしつつ、CVが1,500件を超えるようにしただけ』だったんです。
なるほど。それは何度もコストを数値を変えたりするのが、とても大変だったでしょう? これから広告費用という巨大なお金を動かすにあたって「なんとなく」だと売上未達になったり、広告予算が急に減ってしまう可能性があるから『どうしてこうしたのか?』をいつも考えるクセつけをしておくと失敗したときも改善しやすいよ。 まずは『前提となる数値』を問題文から確認していこう。
ええ?!問題文と前提条件ですか…?
4-1. 問題と前提条件からヒントを得よう!
ここから、どんなヒントがあるか読み取れたかな?
問題文と前提条件はこちら
えっ…?!ここにヒントですか…? 550万円で1500CV獲得する、というルールしか…。 あ!もしかして、これですか?
- サイトに訪問する100万ユーザーのうち、30%が見込みユーザーで、 当月2.8%の割合で自然検索経由でCVしてくれます。
そう!実はゲーム開始時点で980CVは自然検索で獲得できているのです。 よって広告経由で獲得するべきCV数は1,500CV-980CV=520CV なんだ。
うわ…そうだったのか…!てっきり全部広告で…と思っていました。 ということは550万円÷520CVで1件あたりのCPAの上限は10,576円。 最初、 550万円÷1,500CVをして、どの広告に予算を割り振ってもCPAは3,667円にならなくて、ダメだと思っていました。 自然検索経由のCVってとても偉大ですね。
おお、いい気づきだね!「自然検索経由のCVが多い」というのが、とっても大事だから、覚えておいてね。
広告経由で520CVを獲得せよ!
じゃ、520CVをさっそく広告で獲得していくために予算を投下するんだけど、同じ金額を投下したときに獲得件数が1番多くなるのはどの施策かな?
ええっと、、、とりあえず100万円ずつCOSTを入れて…?
待った!!各メディアに100万円ずつ入力しなくても、『CVR』を見ただけで今の質問の答えがわかるよ。
そ、そうか。CVRは「獲得効率」。 1番はGDNのリマーケティングで1.8%、次はGoogleリスティングの社名で1.7%ですね。どうして気が付かなったんだろう…悔しいです。
そうです。デジタルマーケティングは3文字アルファベットがとても多いから最初は戸惑うけど、その指標の意味と一緒に慣れていきましょう。 シンプルにまずはCV獲得を狙ってCVRが高い順に予算を投下してみてね。
では GDNのリマーケティングとGoogleリスティング(社名)にそれぞれ300万円と250万円投下してみますね。 って、あれ?『 ☓imp上限突破 』というエラーが出ています、先輩。
そういうときは、落ち着いて前提条件に戻ってみましょう。
- リスティング(社名)とリマーケティングは、N月の見込み顧客・100万UUの30%が上限impとなり、超過している場合は☓imp上限突破というエラーが出ます。
あ、見込み顧客のUUの30%以上のimpになっているからか…! 獲得効率が良い広告は出稿量の上限があるんですね。 ギリギリの出稿量を狙うんですね。
おお、正解!またもやいい気づきですね。 獲得効率が良いリマーケティング広告やリスティングの社名検索はもっと出稿したくなっちゃうんだけど、一定数までしか出せないんです。どうしてかわかるかな?
え… そんなこと思いもしなかったです。たしかにもっと予算を投下したいです…。
社名検索数やリマーケティングは『製品や社名をもう知っている人』への広告なんだ。つまり「もう買いたい人」である可能性が他と比べると高いから、CVRも高い。 うちのサプリメントの知名度はそれなりにあったとしても、欲しい人が倍増したりはしないから、実際は上限のimp以上の広告を表示できない(=出稿できない)となります。 というわけで、ギリギリの30万impを狙おう。
なるほど!Googleリスティング(社名)に105万円とGDNリマーケティングに126万円ずつですね。よしっと。 このあとも順番にCVR順に考えて、3番目のリスティング(一般)に全部投下すれば、、、あれ?未達だ…。
ふふふ、またいい気付きだね。CPAって、COST÷CV以外でも 計算できる方法があるのは知っていますか?
はい!研修で習いました。ええっと… CPA=CPC÷CVR ですね。
そうです。では、残りの広告をその式にあてはめてみて。
Googleリスティング(一般)が、330÷0.9%=36,666円 GDNオーディエンスターゲティングが、120÷0.8%=15,000円 …うわ!CPAだけで倍以上!さっき何気なく配分したリスティング(社名)とリマーケティングも倍くらいCPAが違う…!
驚いたかな?CVRだけをみると、Googleリスティング(一般)に投下しそうになるけど、CVRが大きく変わらないときはCPCもセットでチェックすることでどっちが安価で獲得できそうか?が見えてきます。 じゃ、残り15,000円のCPAで114CVを獲得すればいいので、COSTはどうなるかな?
15,000円×114CV=1,710,000円投下したら達成ですね! あれ?でも550万円で1,500CV獲得すればいいから148万円も余っちゃいますね。これは節約できますね。
おっと、広告予算は節約はしません。 550万円使い切るほうがいいのですよ。思い出してほしいんですが、N月1,500CVを楽に達成できたのは、なぜだったでしょうか?
ええっと… なんにもしなくても自然検索で980CV獲得できて広告で獲得効率の良さそうなところに予算を配分できたからです。 ・・・あ!
そう!もう気がつきましたね。 残りの広告予算は、N+1月の獲得を行えるように『自然検索を増やす』『リスティングやリマーケティングで獲得する』ための種まきに使うのです。
そうか…やっとわかりました。広告の役割に応じて予算配分も考えないとダメですね。このパーチェスファネル図に当てはめて考えようと思います。
素晴らしい!大正解です。予算配分のコツがつかめてきましたね! それでは1,500CV達成しつつ、来月の見込み顧客が増えるように調整すれば完成です。 Googleリスティング一般とGDNとオーディエンスターゲティングに残りの広告予算を割り振りましょう。
そうか…やっとわかりました。広告の役割に応じて予算配分も考えないとダメなんですね。出稿目的とバランスをこのパーチェスファネル図に当てはめて考える…! これなら、来月以降も同様にすれば目標達成できそうです!予算の割り振り方がわかりました。
よくできました! 今回はシミュレーションゲームだったので、CVRやCTRなどの一部指標は固定としましたが実際は異なります。 例えば、競合の広告出稿状況や媒体や検索エンジンのロジック/アルゴリズム変更、コロナウイルス等の外部環境要因によってユーザーのニーズが変わることも大いにありえます。 ですが、共通して言えるポイントは以下です。
5. おわりに
予算配分シュミレーションゲームから、たくさんの気づきを得た新人A。
次回、第2話「アレルギーが出そう…指標ってどれからみたらいいんだ?!」をお楽しみに!