Chromeの3rd Party Cookie規制はどうなった?最新状況を整理!

2024年1月、Chromeは試験的に1%のユーザーの3rd Party Cookieのサポートを終了。2024年末までには対象を全ユーザーに拡大し、サポートが完全に終了する予定でした。しかしGoogleは2024年4月23日に3度目の延期を発表し、さらに2024年7月には3rd Party Cookieを廃止することを断念し、今後もプライバシーに配慮する形を模索しながら継続を利用していくことを宣言されました。

度重なるスケジュール変更への混乱や、今後の対策に対して以下の悩みや疑問を感じているマーケターもいることでしょう。

  • 結局対策をする必要はないのか?
  • 対策するとしても、何をすべきかわからない

本記事では、Chromeによる3rd Party Cookie規制の状況や、規制に対してすぐにでも対応すべき理由を紹介します。
適切なデータ収集の方法を把握できるようになるので、マーケティング活動でぜひご活用ください。

Googleの3rd Party Cookieの廃止方針の撤回に対し、弊社のCookie規制を当初から調査/研究してきた専任チームから今回の発表の解説と、Cookie規制の現在・未来を解説したウェビナーを開催しました。
アーカイブはこちらからご確認ください。

1. Chromeによる3rd Party Cookieの規制状況について

ユーザーのプライバシー保護のため、Cookie情報を保有する仕組みを持つ各ブラウザ側も、Cookie規制を進めています。

※ 参照元:StatCounter – Browser Market Share Japan(Jan 2024)

上の図は、日本のブラウザシェア率とCookie規制の状況を示したものです。SafariやEdge、Firefoxなどでは、3rd Party Cookieやトラッカーへの規制が進んでいます。

ブラウザ側がCookieをブロックする仕様を採用してしまえば、Cookieを利用できなくなるため注意が必要です。特に日本国内でブラウザシェア率の高いChromeでCookie規制が進めば、その影響は多大なものとなります。

1-1. 規制が始まるのはいつから?

当初の公式見解では、Chromeは2024年末までに3rd Party Cookieのサポートを完全に終了する見込みでした。

しかしGoogleは、2024年4月23日に3度目の延期を発表。2024年7月には「3rd Party Cookieを廃止することを断念し、今後もプライバシーに配慮する形を模索しながら継続を利用していくこと」を宣言されました。

3rd Party Cookie廃止に代わり、ユーザーがブラウザで選択できる新機能の公開が予定されていたり、プライバシーサンドボックスの開発は続行されるということもあり、将来的に3rd Party cookieが継続活用可能なのかはまだわからない状況です。
そのため今後もCookie規制への対応については関心を持っておき、対策を進めていくことは重要です。

Cookie規制が与える影響については、以下の記事もご参考にしてください。
【2024年版】Cookie規制とは?日本の状況・影響・対策方法まで解説(その2)

2. 3rd Party Cookieに代わる技術「プライバシー・サンドボックス」

3rd Party Cookieに代わる代替策として、Googleは「プライバシー・サンドボックス」のプロジェクトを進めていました。

プライバシーサンドボックスは、ユーザーのプライバシー保護や効果的な広告配信を行うための仕組みです。この技術は、Google Chromeブラウザ(JavaScript)とAndroidのAPIを活用しています。複数のAPIを用いて広告のターゲティングや効果測定を行います。

2-1. プライバシー・サンドボックスの主要なAPI

Web広告と関連性の高いプライバシー・サンドボックスの主要なAPIは、以下の通りです。

  • Topics API
  • Protected Audience API
  • Attribution Reporting API

ここでは、それぞれの特徴について簡単に解説します。

Topics API

「Topics API」は、ユーザーのウェブ閲覧履歴を基に、そのユーザーが興味を持っているトピック(話題や分野)を自動的に推測するAPIです。

例えば、APIがユーザーが興味のあるトピックをコスメだと判断した場合です。ユーザーが別のサイトを訪問した際には、コスメに関連する広告が表示されやすくなります。

これは、APIが高頻度で判別したトピックを、ブラウザにリスト化して記録する仕組みによります。広告スペースのあるサイトでは、リストからランダムに受け取ったトピックを共有し、ユーザーに関連性の高い広告を表示します。

関心のあるトピックの判断から広告表示までをブラウザ上で行うため、Cookieを使わずとも有益な広告表示が可能です。

Protected Audience API

「Protected Audience API」とは、ブラウザ上で適切な広告を表示させるためのAPIです。リマーケティングやカスタム オーディエンスに有効です。

このAPIでは「インタレストグループ」という仕組みを用いて、広告主はブラウザ上でユーザーの興味関心に合わせた広告を選択できます。

インタレストグループとは、共通の興味関心を持つユーザーのグループのことです。
ユーザーが広告主のサイトを訪問した際、そのページに関連するグループへの登録がブラウザ内で行われます。
インタレストグループに指定されたユーザーが広告スペースのあるサイトを訪れると、ブラウザ上でオークションが実施されます。最高入札価格と判定された場合に広告表示が可能です。
このプロセスはすべてブラウザ内で完結するため、ユーザーの情報が外部のサーバーに送信されたり、他の企業と共有されたりすることはありません。

Attribution Reporting API

「Attribution Reporting API」は、ユーザーのプライバシーに配慮しながらパフォーマンスを測定できるAPIです。
具体的には、ブラウザが以下のことを記録します。

  • ユーザーによる広告のクリック・閲覧データ
  • ユーザーが広告主のウェブサイトに訪問してコンバージョンをしたデータ

など
アドテクベンダー(広告媒体やアドネットワーク)はこれらのレポートを、遅れて受け取る、あるいは暗号化された状態で受け取ります。ユーザーのプライバシーを保護しながら広告の効果測定が可能です。

2-2. プライバシー・サンドボックスのメリット

プライバシー・サンドボックスの大きなメリットは、ユーザーのプライバシーを保護しながら広告配信が可能となります。具体的には、ブラウザ側でユーザーによる広告の接触と、広告主のサイトの接触を紐付けることができます。

プライバシー・サンドボックスの機能が充実していけば、Cookieを使用せずに効果的な広告が配信できるようになるとされています。

2-3. プライバシー・サンドボックスのデメリット

一方で、プライバシー・サンドボックスは3rd Party Cookieの役割を完全に再現できるものではありません。

特に、Topics APIにおいては、トピックが限定される点が大きなデメリットです。最終的には数百〜数千件以上のトピックが用意されると発表されています。しかし、いずれにせよ利用者はGoogleが定めたカテゴリーのトピックに従う必要があります。

3. 3rd Party Cookie規制に向けた対策

Chromeでは断念されたとはいえ、全体的な3rd Party Cookie規制の動きに向けて、今まで通りの効果を期待するためには計測や配信への対策が必要です。この点については、以下の記事でまとめておりますのでぜひご確認ください。

Cookie代替技術とは?デジタルマーケティング(WEB広告)で使える技術8選と活用のポイントも紹介

4. 3rd Party Cookie規制に向けた対策のポイント

Cookie規制が更に進めば、マーケティング手法の変更が必要となるでしょう。それだけでなく、戦略や組織設計の見直しなども不可欠です。ここでは、Cookie規制後にマーケティングの成果を最大化する3つのポイントを紹介します。

  • ファーストパーティーCookieを重視した施策を実施する
  • 個人情報の取り扱いに注意して長期的な信頼関係を築く
  • マーケティング戦略や組織設計を見直す

4-1.1st Party Cookieを重視した施策を実施する

マーケティングの計測においては、1st Party Cookieを活用した環境整備を進めましょう。Cookie規制というと、Cookieそのものが廃止されるイメージがあるかもしれません。しかし、現段階で規制が集中しているのは3rd Party Cookieです。1st Party Cookieは引き続き活用できます。

1st Party Cookieにおける自社サイト内の計測・分析においては、利用目的がはっきりしているため、Cookie規制の影響を今後も受けにくいと考えられています。当分は安定した利用が見込めるでしょう。

また、ユーザーから直接取得する質の高い1st Party データを活用した共通IDソリューションや、オムニチャネルマーケティングを導入すれば、チャネルを超えた運用も可能です。1st Party データを効果的に活用できれば、マーケティング成果の最大化につながるでしょう。

Chromeの規制に対応するには、1st Party データによる広告効果測定を強化するための環境整備が大切です。

4-2. 個人情報の取り扱いに注意して長期的な信頼関係を築く

Cookie規制下においてユーザーと長期的な信頼関係を築くためには、個人情報の慎重な取り扱いが非常に重要です。

従来のパーソナライズド広告は、「情報が知らぬうちに利用されている」と不快感をユーザーに与えていました。

今後はユーザーのプライバシーを尊重し意向を汲み取らなければならず、Cookieの利用にはユーザーからの同意が必要です。また、同意を得る際には、ユーザーのベネフィットや体験価値の向上につながるよう配慮しなければなりません。不信感を抱かせてしまうと、信頼関係を結べずに短期的な関係で終わってしまうからです。

Cookie規制下でLTV(Life Time Value|顧客生涯価値)を向上させるには、プライバシーを尊重したマーケティング活動が必要不可欠だと言えるでしょう。

そのためにも、同意管理プラットフォームの導入も検討してみましょう。
同意管理プラットフォーム(CMP|Consent Management Platform)とは、Webサイトを訪問したユーザーからCookie利用の同意を取得するツールです。同意を得る際には、Cookieの利用目的や提供先を明示します。同意を得られた情報や通知先に限りCookieを発行し、分析に活用します。ツールの管理画面では同意取得率を確認でき、効果的な文面やポップアップ表示などの改善が可能です。

4-3. 顧客理解に基づく全体最適と個別最適を追求する

ポストCookie時代のデジタルマーケティングでは、顧客一人ひとりのニーズや行動パターンを深く理解し、その理解に基づいてマーケティング戦略を最適化することが重要です。
そのためには、まず様々なデータを多角的に分析し、顧客の本質的なニーズや行動パターンを把握する必要があります。

次に、この理解に基づいて仮説を立て、素早く検証を繰り返すことが大切です。仮説を立て、実際に広告を配信して反応を測定します。そして、結果に基づいて仮説を修正し、再度検証を行うサイクルを高速で回すことで、効果的なマーケティング施策を見つけ出すことができるでしょう。
こうした取り組みを通じて、単なる広告運用の最適化(個別最適)だけでなく、マーケティング戦略全体の最適化(全体最適)を図ることが可能となります。

顧客理解に基づく全体最適と個別最適の追求は、新たな価値を提供し、新たな市場を創造するための「本来あるべきマーケティング活動」といえるでしょう。

5. おわりに

Cookie規制下において、マーケターはユーザーのプライバシーを尊重しつつ、効果的な広告配信を模索しなければなりません。

Chromeの規制がもし進行した場合、いよいよ3rd Party Cookieに依存しない手法への切り替えが必要となるでしょう。現時点では猶予があるように思えるかもしれませんが、実際にはCV乖離をはじめCookie規制による影響が出始めています。

正確な広告効果測定には、1st Party データの活用が肝要となります。

コンバージョンAPIツールや1st Party データをうまく活用することで、効果的な広告運用を実現させましょう。

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